2023年の日本経済を振り返る

2023年12月15日・経済 ・#2023-24年末年始企画 ・by kota

2023年もいよいよ終わりが近づいてきましたが、2023年の日本経済にどんな印象をお持ちでしょうか?

やはり、思い当たるのが「物価は高いままだなぁ」ということでしょう。昨年の年末の記事でも物価高について扱いましたが、その影響は2023年も続いていますね。一方で「コロナ禍からの回復」というイメージも大きい1年でした。新型コロナの5類移行などを受けて消費が回復傾向にあるということは、読者のみなさんも実感したはずです。

この記事では、2023年日本経済の振り返りとして、先に挙げた「続く物価高」「コロナ禍からの回復」の2軸を中心に据えて解説していきます。

続く物価高

まずは、物価高について具体的な数字を見ていきます。

毎月公表される消費者物価指数、2023年は前年度同月比3%程度の上昇が続いています。消費者物価指数とは、家計に関わる財やサービスの価格を総合した物価を、ある年を100(現在は2020年を100)として表した数値です。昨年度に引き続き物価が高いままだと言えますね。

また、消費支出に占める食費の割合を表すエンゲル係数29%まで上昇しました。これは1980年以来43年ぶりの数値で、食料品価格の高騰に加え、実質賃金の低下、つまり賃上げが物価高には追いついていない現状が大きな原因となっているようです。

では、この物価高はなぜ起きているのでしょうか?原因に迫っていきます。

①続く円安

昨年の秋から問題となっていた円安は2023年に入っても状況が変わらず、11月前半には150円台をつけるなど今年も物価を押し上げる要因となっています。

円安になると、輸入品の価格が上がります。 例えば、1ドル=100円から1ドル=120円と円安になった時、100ドルの商品の輸入価格は10000円から12000円に上昇しますね。このようにして円安が物価高に繋がります。

では、その円安の原因はどこにあるのでしょうか? 最も大きな理由として外国との金利差があります。政府や中央銀行は、銀行にお金を貸す際の政策金利を定めます。この政策金利が高いと銀行は中央銀行からお金を借りにくくなるため、銀行も民間(個人や企業)に貸す際の金利を上げます。一方、政策金利が低いと、銀行は中央銀行からお金を借りやすくなるため、銀行も民間に貸す際の金利を下げます。

これをお金を貸す側の視点で見てみると「政策金利が高いとお金を貸した際の利息も高く得られる」となりますよね。つまり、金利の高い通貨を多く持っておいた方がお金が増えやすいということです。

現在、日本では経済を回して景気を向上させるため金利を低く抑える政策をとっています。一方で海外諸国の多くはコロナ禍後のインフレを抑えるために金利を上げているのです。こうなると、日本円を持っているよりドルなど海外の通貨を持っている方が得だと考える人が増え、円の人気がなくなります。こうして円安となっているのです。

②不安定な国際情勢

円安と同じく、昨年から続く国際情勢の影響も無視できません。2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻による影響は、戦闘が続く現在も継続しています。

さらに、今年10月に勃発したイスラエルとハマスの戦争も不安定要因となっています。現時点ではそこまで大きな影響が出ているとはされていないものの、戦闘が激化すれば原油価格が75%上昇する可能性があると試算した報告書を世界銀行が公表するなど、情勢の変化には注意が必要ですね。

また、他にも鳥インフルエンザの流行による卵不足・卵価格の高騰中国の不動産市場の後退など、経済・家計を揺るがす事態も発生しました。

コロナ禍からの回復

物価高に苦しむ一方、経済には明るい兆しもありました。

11月にあった、上場企業の中間決算発表では、約半数の企業が増益という結果になりました。また、日経平均株価も3万円台に乗り、33年ぶりの高水準となっています。これには、円安の影響で製造業の輸出が伸びたことが背景にあるようです。

また、新型コロナによる規制が大きく緩和されたことにより、人出が大きく増えました。 NHKのこちらのサイトで各地の人出の推計が確認できます。2022年と2023年の様子を比べると、2023年に入って人出が大きく増加し、コロナ禍前と同水準まで戻ってきているのが見て取れますね。 人出が戻ってきたことによる小売業などへの経済効果が期待できます。

さらに、インバウンド関連もコロナ禍前の水準に回復しつつあります。訪日外国人の数は10月に2019年同月の数を上回りました。また、国内旅行での消費額も2022年から大きく伸び、2019年とそれほど変わらない額になってます。

経済政策は?

ここまで、2023年の日本経済を概観してきました。経済回復の兆しはあるものの、やはり物価高が家計の大きな負担となっているのが現状です。

ここでは、物価高に対し2023年にどんな政策が取られてきたのかを見ていきます。

金融政策の行方は?

円安のところで述べたように、日本はここ数年間金利を下げ市場にお金を投入する金融緩和を続けてきました。市場のお金を増やして経済を活性化することが目的ですが、これによって円安が進んでしまい、問題となっています。この現在の金融政策は変更されるのでしょうか?

今年4月には、日本銀行総裁が交代し新たに植田和男氏が総裁に就任しました。「金融政策の変更があるかも?」という予測もあったのですが、就任直後の会見で植田氏は「金融緩和の継続が適切」と話し、政策の維持を表明しました。

一方で、7月には長期金利の上昇を0.5%程度から事実上1%まで容認する方針に変更しました。これは、海外との金利差の広がりを受けた運用の柔軟化だということです。

金利を上げたら円安は解消されるが経済が冷え込む、金利を低いままにすれば円安が進行する、という難しい状況にあるのです。このような現状で、今後、金融政策の大きな変更があるのかはとても重要なポイントになります。

給料は増えるの?

物価を下げるだけでなく、賃金が上がるのかも重要なポイントです。

賃金の分かりやすい目安の1つに最低賃金があります。1時間あたり賃金の最低ラインを示すもので、都道府県ごとに毎年改訂されます。今年の改訂で、最低賃金は全国平均1004円となり、全国平均がはじめて1000円を超えました

一方で、物価の影響を考慮した実質賃金は10月まで19ヶ月連続の下落となっています。つまり賃上げは行われているが物価上昇に追いついていないというのが現状なのです。

また、世界と比較してみても日本の所得は増えていないと分かります。

苦しい家計状況を何とかするためには、物価高に見合った賃上げが必要だといえますね。

最後に

ここまで、今年2023年の日本経済を振り返ってきました。「回復の兆しはあるもののいまだ家計は苦しいまま」という現状をどう打破していくのか、しっかり向き合う必要がありますね。

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参考

e-Stat「消費者物価指数」2023年12月14日閲覧
TBS NEWS DIG「「エンゲル係数」が過去43年で最高 物価高で「食費」増える 家計負担はおととしより“21万円増”見通し」2023年10月20日
NHK「円相場 一時1ドル=151円92銭 ことしの最安値更新」2023年11月14日
NHK「世界銀行 “原油価格が75%高騰するおそれ” 中東緊迫化で」2023年10月31日
NHK「街の人出は? 全国18地点グラフ」2023年12月14日閲覧
NHK「東京証券取引所で上場企業の中間決算ピーク 半数以上が増益に」2023年11月10日
日本政府観光局「訪日外客数(2023 年 10 月推計値)」2023年11月15日
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年7-9月期(速報)」2023年11月15日
NHK「【詳しく】日銀 植田新総裁会見「金融緩和策 継続が適当だ」」2023年4月10日
NHK「日銀 植田総裁 就任から半年 金融政策正常化に向けた道筋 課題」2023年10月9日
日本経済新聞「最低賃金、全国平均1004円に 地方中心に24県目安超え」2023年8月18日
日本経済新聞「10月の実質賃金2.3%減 19カ月連続でマイナス」2023年12月8日
厚生労働省「令和4年版 労働経済の分析 -労働者の主体的なキャリア形成への支援を通じた労働移動の促進に向けた課題-」2023年12月11日閲覧