5類引き下げで何が変わった?分かりやすく解説

2023年07月12日・社会 ・by リコ

2019年に始まった新型コロナの流行。今ではマスクも日常の一部になってしまいました。しかしそんなコロナ禍も、ついに日本で終わりを迎えたと言って良いかもしれません。2023年5月8日に、新型コロナは5類感染症に引き下げられました。

5類引き下げとは言っても、私たちの生活はどう変化するのでしょうか?そして、これは国全体にどのような影響をもたらすのでしょうか?

今回は、そもそも5類感染症とはなんなのか、どのようなことが期待・懸念されるのか、そして、国際的に見ると、コロナについて日本がどのような立ち位置なのかを詳しく見ていきたいと思います。

5類感染症とは

ではまず、5類感染症とはなんでしょうか?

日本では感染症法が定められており、この法律が対象の感染症を危険度に応じて分類しています。危険度が最も高い1類から最も低い5類まで定められており、加えてこのいずれにも分類されない感染症は新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類されます。

新型コロナは2023年5月8日に、新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に引き下げられました。これにより感染対策への行政の関与が大幅に軽減され、対策は個人や事業者の自主的な取り組みが基礎となりました。主な変化は以下の通りです。

①濃厚接触者の特定や感染者の外出自粛要請がなくなり、それらの対応は推奨のみとなった。
②コロナ患者の医療費が全額補助から一部自己負担となった。
③換気、手洗い、マスク着用等の感染対策は引き続き有効な対策と見なされるものの、政府から求めることは無くなった。
④政府が事業者を対象に公表していたコロナ感染予防のガイドラインが廃止された。

それでは、引き下げによるこれらの変更は社会にどのような影響をもたらすのでしょうか?

5類引き下げの期待と懸念

経済の活性化

まず、5類引き下げによる一番のメリットは経済の活性化です。生産活動と消費活動が活発になり、コロナによって打撃を受けた経済が改善されていく見込みです。

生産活動は、濃厚接触者の外出自粛要請が廃止されることにより増加します。濃厚接触者の待機時間がなくなったことで社会活動が継続でき、その分の生産量が上がるのです。

消費活動は、政府による事業者と消費者への行動制限がなくなったことにより増加します。飲食、レジャー関連サービスなどの営業活動範囲が広がることと、消費者の警戒や行動制限が減少することで、消費量が上がる見込みです。

一般医療機関の患者受け入れ

もう1つのメリットは、一般医療機関がコロナ患者の対応をできるようになったことです。これにより特定の医療機関への集中した負担の軽減が期待されています。

5類引き下げ以前は、指定された医療機関しかコロナ患者の受け入れが認可されていませんでした。この負担集中により保健所のHIV対応など他の事務が圧迫されていたのですが、今回の引き下げによって改善される見込みです。

しかし、一般医療機関の対応が認可されただけであって義務付けられた訳ではないため、入院調整などの負担を考えてコロナ患者を引き続き受け入れない機関が多くなり、効果は見込めないであろうという声も多数上がっています。

感染拡大の恐れ

一方、5類引き下げにおいて最も懸念されているデメリットは、対策緩和による感染拡大です。政府による感染対策の要請がなくなり全て自己判断になることで、第9波が来ることが心配されています。実際に日本医師会は7月上旬の時点で「現状は第9波と判断することが妥当だ」とコメントしています。

コロナ対応における世界と日本

さて、ここまでは日本の新型コロナ5類引き下げに焦点を当ててきましたが、今度はそんな日本を世界と比べてみましょう。

まず、日本の人口当たりの新規感染者数は、他の主要国と同様に世界全体の平均を超えています。2022年末の第8波は主要国の中でもトップレベルの感染者数が観測されましたが、2023年6月現在はおおよそ中間に位置しています。

また、日本経済は世界全体と同様に回復傾向にあり、落ち込みピークに比べると経済活動の正常化を受けて緩やかに元に戻りつつあります。2023年以降の実質GDPは毎年1%台の成長を維持する見込みです。

一方で、欧米の実質GDPはコロナ前水準(2019年)に比べてプラスに成長している中、日本の実質GDPはコロナ前水準には達していません。2020年から2022年の3年間の平均成長率はマイナス0.4%です。ですが、今回の5月の5類引き下げによってルールが緩和され、今後は一層、日本経済が活性化すると見込まれています。

参考

新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボード「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付け変更後の基本的感染対策の考え方について」2023年3月31日
朝日新聞「新型コロナ「5類」に移行〈上〉」2023年4月28日
朝日新聞「新型コロナ「5類」に移行〈続編〉」2023年5月8日
第一生命経済研究所「コロナ分類の変更に関する経済効果」2023年1月23日
Yahoo! JAPAN 「新型コロナが5類に移行 メリットとデメリットは?」2023年1月21日
読売新聞「コロナの5類引き下げ 今の医療体制では心配だ!」2023年1月31日
Our World in Data “Coronavirus (COVID-19) Cases ” 2023年7月12日 閲覧
三菱総合研究所「ポストコロナの世界・日本経済の展望|2023年5月」2023年5月18日
日本経済新聞「国内景気、弱さ浮き彫り コロナ禍からの回復鈍く」2023年2月15日
NHK「新型コロナ感染状況「第9波と判断が妥当」日本医師会」2023年7月5日
厚生労働省「感染症の範囲及び類型について」2014年3月

ライターのコメント

5類引き下げによる変更で、コロナ前のような日常も徐々に取り戻されてきました。マスクをしていない人が増え、サービス業などの規制も少なくなっています。一方で、感染者数が増えてきているのも事実です。快適なポストコロナを実現するためには、規制緩和を楽しむだけでなく、引き続き適度な感染対策意識を維持することが大切だと思います。