国会議員の年収は高すぎる、野党は批判ばかり……それって本当?調べてみました

2022年03月03日・政治 ・by Newsdock編集部

このごろSNSを見ていると、国会議員批判をよく見かけるのではないでしょうか。
コロナ禍に入り、対コロナ政策が注目されるようになってから批判はさらに増えているような感覚があります。
たとえば……「国会議員は寝てるだけ、もっと仕事しろ」「国会議員は給料もらいすぎ、ボランティアでやれ」「野党は批判してるだけ、もっと具体的な提案をしろ」
確かに、テレビやネットニュースを見ているとそのような印象を受けます。しかし、本当にそれを鵜呑みにして良いのでしょうか? この記事では、こうしたよくある批判の声に対して、感情を抜きにデータを活用して、普段とは異なる視点から考察してみましょう。

「国会議員は寝てるだけ、もっと仕事しろ」

国会中継では、寝ている議員がカメラでクローズアップされることを見た人もいるかもしれません。
実際にテレビ番組の中でも、地方議会の議員を観察する企画で、真面目に会議に参加していない議員の様子を撮影し、後ほどインタビューをするというものが存在します。ネット上などでは、私たちの膨大な税金が支払われているのに堂々と昼寝するなんて、という怒りの声も見られますね。
しかし、実は議員の仕事は国会に出席するだけではありません。むしろそれ以外の活動が非常に重要で、そちらのほうに体力を使うのです。 具体的には、有権者や利益団体へのヒアリング、国会議員同士の勉強会、地元での講演活動などになります。

つまり、「国会で寝てる」ことは「全く仕事をしていない」ことには必ずしも直結しないのです。もちろん、仕事中の昼寝を擁護する気は全くありません。しかし、「全く」仕事をしていないというのはやや言いすぎている可能性があるのです。

とある議員のスケジュール例です。
〈午前7時〉 衆議院赤坂宿舎玄関
〈午前8時〉 若者党政策審議会
〈午前8時50分〉 国会議事堂入り
〈午前9時〉 衆議院委員会
〈正午〉   支援者への国会ツアー 
〈午後1時〉 衆議院本会議
〈午後3時〉 国会内の議員事務所(取材)
〈午後4時〉 国会内会議室 超党派議員連盟会合(勉強会)
〈午後5時〉 秘書と委員会質問の打ち合わせ
〈午後7時〉 居酒屋 若者党懇親会
勉強会や懇親会など、実は議会出席以外の仕事もあるのですね。

「国会議員は給料もらいすぎ、ボランティアでやれ」

議員の給料は官僚との比較で話題になることが多いですが、実際のところどれくらいなのでしょうか。実は、国会議員の給与(歳費)は法律で額が決められており、衆議院議員、参議院議員は両者、月129万4000円で同額です。ボーナスに相当する期末手当もあり、6月と12月に各約314万円が支払われ、つまりはまとめると、年2,180万円が支払われるのです。議長や副議長、大臣になると、さらに金額がアップします。

この金額とは別に、昨今話題となった政治活動を支える「文書通信交通滞在費」、通称文通費が月100万円支払われるのです。使い道を明らかにする必要も領収書の提出も不要で、1日でも議員に着任したら満額が支給される点から、国会議員の小遣いだとして批判が殺到していることは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。

少し横道にそれますが、国会議員に関わる人々の給料ってどうなっているのでしょう? そこで、秘書の給料を調べてみました。参議院の公式ホームページによると、「国会議員の秘書の給与等に関する法律に基づき、同法別表第一の1級2号給(令和3年4月現在、月額434,640円)以上の給料が支給されます。このほか、同法の定めるところにより、諸手当が支給されます。」とのこと。
主な仕事は国会議員の政策立案・立法活動等をより専門的な立場から補佐するための研究調査、資料の収集分析並びに作成等と述べられています。国会議員の予定にかなり束縛される仕事であり、残業時間も長いことが推測でき、ハードな仕事であることは間違いないでしょう。年齢もさまざまであることから一概には言えませんが、金額だけ見るとなかなか高く思われます。

さて、本筋に戻りましょう。国会議員の給料は、その金額の大きさ故に批判が溜まりやすいのでしょう。では、なぜこうも金額が大きいのでしょうか? 理由は、以下の2点です。

1点目が、生活保障です。

実は先ほどの秘書の給料の話がここで効いてくるのですが、国会議員は人件費を自腹で払う必要があるのです。彼らは政治活動を行うべく事務所を設けるわけですが、ここには秘書や事務員、アルバイトが、少なくとも5人、多ければ20人以上存在しています。国から給料が出る「公設秘書」は3人であり、その他の人件費は議員自身の収入から支払う必要があります。

先ほどの秘書の給料を考えてみると秘書1人当たりには530万円程度の人件費がかかり(ボーナスなどを含めたらもっとでしょう)、そのほか事務員らの人件費も踏まえると2,200万円程度、という年収の見え方が変わるかもしれません。
こうした状況ゆえに、国会議員は資金が不足することも多いようで、そうした場合にはパーティーを開き、後援会や政党、派閥から資金を援助してもらっているのです。この「パーティー」という名前の響きや、コロナ下でも行われていたという事実に対し、政治への不信感を募らせた方もいたかもしれません。この状況での開催に批判があるのは強く同意しますが、実は国会議員の命綱という側面もあったのです。

2点目が、賄賂防止です。

もし十分な収入が保証されなければ、賄賂や汚職が横行する可能性があります。 経済的保証がある環境下でも国会議員の賄賂問題や汚職が少なくない中、この保証が失われたらどうなるのかは、簡単に想像がつくと思います。クリーンな政治活動のために高収入が保証されていた方が良いというのは納得がいくかもしれません。

とはいえ、国会議員の経済的保証に数千万円も国民の税金を使うべきかは、やはり議論の余地があります。いくら必要かを数値で正確に考えるのが難しいからこそ、文通費のような資金が存在していても曖昧にされていることも否めません。文通費問題のように、国会議員の内部から自分たちの給料を客観的に見直す声が出ることが望ましいのですが、高い給料を自ら下げようとすることはなかなか難しいのが実情なのでしょうか。

「野党は批判してるだけ、もっと具体的な提案をしろ」

皆さんは、野党に対してどんなイメージを抱いていますか? 与党政権の政策を批判し、それをよりよいものに変えていくことが野党の役割であることに異論はないものの、テレビやネットニュースのコメント欄を見ていると、野党は批判ばかりで対案を出していないような印象を受け、不満を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実際には野党は多くの立案をしており、かなりの数の法案が通っているのです。現に立憲民主党は、2020年10月26日から12月5日までの約1カ月半に行われた第203回臨時国会にて、与党よりも多い10本の議員立法を提出し、うち5本が成立しています。さらに、2021年1月18日から6月16日までの約5カ月に行われた第204回通常国会では46本の議員立法を提出し、うち18本が成立しています。

以上のような実績があるにもかかわらず、野党に対して批判ばかりという印象を抱くのは、実は報道の切り取り方の問題でもあると考えられます。とはいえ、野党がずっと批判的な口調でまくし立てているのを見ると、ちょっとげんなりする方も多いのでは。こういったイメージと報道の切り取り方が相まって、野党の仕事が見えにくくなっているのかもしれませんね。

3つの主張を踏まえて

ここまで国会に関して世の中で言われがちな3点の主張を取り上げ、検証してきました。しかし私は、これら3つの主張は完全なる誤りであるということを言いたいわけではありません。立ち止まって違う視点から眺めてみると考えは変わるかもしれないし、そうでないかもしれません。それでいいんです。ただ、ありふれた主張を鵜呑みにする前に、一度考えてみる機会をご提供したい、そう考えている次第です。

参考
河北新報「議員の待遇って? 衆参とも年給与2180万円<いちから分かる衆院選>」2021年10月28日
参議院「政策担当秘書資格試験 勤務条件等」
テンミニッツTV「なぜ「国会議員」の給料は高額なのか?」2020年1月17日
立憲民主党「立憲民主党は56本の議員立法を提出しました」2021年10月21日 
NHK 選挙 WEB「のぞいてみよう!国会議員の一日」 2017年1月19日