フランス大統領選2022 〜結果とその背景〜

2022年04月25日・国際 ・by Newsdock編集部

4月10日(日)に第1回投票が、4月24日(日)に決選投票が行われたフランス大統領選挙。最終的には、ルペン氏とともに決戦投票に進んだ現職のマクロン氏が、2017年に続いて2回目の当選を果たしました。

そこでこの記事では、今回のフランス大統領選挙について、第1回投票における候補者の主張と投票の結果、決選投票に進んだ2人の候補者の主張と最終的な決選投票の結果、およびマクロン氏勝利の背景を詳しく見ていきます。

第1回投票の候補者

選挙の中心となったのは以下の4人の候補でした。
1人目が、エマニュエル・マクロン氏。現大統領で、中道派です。プーチン大統領との対話などを行い、注目されました。
2人目が、マリーヌ・ルペン氏。大統領選への3度目の挑戦であり、5年前の前回にマクロン氏に大敗した経験をもちます。この2人の主張は後述します。
3人目が、ジャン=リュック・メランション氏。極左で、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を訴えるなどしていました。
4人目が、エリック・ゼムール氏。極右で、フランス第一の主張の下で移民反対を唱え、注目を浴びました。

第1回投票の結果 

主にこの4人で争われた第1回投票の結果は以下のようになりました。

第1回投票では過半数を占める候補がいなかったので、上位2名による決選投票が行われることになりました。得票率1位のマクロン氏と2位のルペン氏による決選投票が行われることとなりました。

決選投票の2人の主張

決選投票の候補者となったマクロン氏とルペン氏の主張について、項目ごとに見ていきます。

ウクライナ情勢への対応

マクロン氏
ウクライナ問題はEUが結束して外交的な解決を目指すことを目指しており、ロシアに対する制裁についても、強化することを訴えます。

ルペン氏
自国の利益を優先する政策を打ち出しており、天然ガスや石油の輸入を止める制裁は経済を圧迫するため、ロシアに対する制裁の強化に反対する姿勢を打ち出しています。

EUへの対応

マクロン氏
国際協調やEU=ヨーロッパ連合を重視する政策を打ち出しており、引き続きフランスとドイツが中心となってEUの結束を保つ考えです。

ルペン氏
EUによってフランスの主権が奪われていると主張しています。EUからの離脱は否定したものの、現状に強い不満を示しEUを改革する必要性を訴えています。

物価高騰対策

マクロン氏
当面の間ガスと電気の料金を据え置く措置をとり、危機が続く間はこの措置を取り続けるという姿勢をとっています。付加価値税の引き下げよりも効果がある措置だとして、ルペン氏の主張を正面から批判しています。

ルペン氏
燃料や電気代などにかかる付加価値税を20%から5.5%に引き下げる姿勢をとっています。燃料は生活必需品だからこそ、一時的な方法ではなく持続的に燃料価格を引き下げることを提案しています。右翼「国民連合」下院議員ですが、法と秩序、移民などの右派にとっての典型的な優先課題より、日々苦しむフランス労働者を重視する姿勢が伺えます。

決戦投票直前の世論調査の結果

4月22日(金)に行われた世論調査によると、「マクロン氏に投票する」が55%、「ルペン氏に投票する」が45%を占めています。マクロン氏が圧倒的に優勢だった前回とは違い、ルペン氏が追い上げていました。ですが、依然マクロン氏の優位はゆらいでいませんでした。

決戦投票の結果

4月24日(日)に行われた決選投票の結果は以下のようになり、マクロン氏が再選を果たしました。

決戦投票の結果の背景

マクロン氏が勝利した結果の背景には、3位だった急進左派の下院議員のメランション氏・4位だった極右の評論家のゼムール氏に投票した有権者の動向が影響しているようです。

第1回投票の後の世論調査では、メランション氏に投票した有権者のうちマクロン氏に投票すると答えた人は39%、ルペン氏と答えた人は17%、態度を明らかにしていない人が44%でした。労働者や低所得者層などメランション氏の支持層はルペン氏と重なることから、この態度不明層の動向が注目されていましたが、第1回選挙と比べマクロン氏は20ポイント程度、ルペン氏は18ポイント程度、投票率が伸びた結果を踏まえると、一定数がマクロン氏に投票したことがうかがえます。

こうしてメランション氏に投票した有権者の多数がマクロン氏に投票したことが、マクロン氏の勝因の一つだったと言えるでしょう。ゼムール氏に投票した人のうちルペン氏に投票すると答えた人が78%にのぼっていたのですが、元からゼムール氏支持者は多くなかったことから、そこまで大きな影響はなかったのでしょう。

おわりに

2017年度の前回の選挙ではマクロン氏はルペン氏に圧勝でしたが、今回は接戦となりました。外交重視路線か国内重視路線で主張が真逆だったこの2候補の投票結果が接戦だったことは、フランス国内の分断を象徴しているとみることができるかもしれません。フランスの国内情勢が変わってきている今、フランスの今後には注視したいところです。

参考

NHK「どうなる?フランス大統領選挙 マクロン大統領再選に強敵現る」2022年2月1日
日本経済新聞「仏大統領選決選投票、左派票がカギ 急進左派候補3位に」2022年4月11日
BBC NEWS「【解説】 仏大統領選、ル・ペン氏とマクロン氏による「悪評」の闘い」2022年4月23日
朝日新聞デジタル「仏大統領選、最初で最後のTV討論会 ルペン氏、5年前の雪辱なるか」2022年4月20日
ニッセイ基礎研究所「ルペン大統領ならどう変わるのか?-2022年フランス大統領選挙-」2022年4月20日
NHK「フランス大統領選 あす決選投票」2022年4月23日