仮想通貨を日常的に使う日が来る!?

2022年03月11日・社会 ・by Newsdock編集部

「仮想通貨」という言葉を一度は聞いたことがあるでしょう。「仮想通貨」とは、ゲーム内のお金のように実物が存在しない文字通り「仮想」の「通貨」のことです。「じゃあ、電子マネーと一緒でしょ?」と思った方、ちょっと惜しいです。電子マネーはあくまでも円やドルといった通貨のやり取りを電子的に行えるようにするツールですが、仮想通貨はそれ自体が通貨なのです。

さて、ある日突然「今日から買い物には円じゃなくて仮想通貨を使いましょう」と言われたらどうしますか? 戸惑いますよね。そんなことがあるわけがないと思う方もいるでしょう。実際、現在日本における仮想通貨の普及率は7.8%で、支払いに仮想通貨が使える店も限られていますので、今すぐに日本で仮想通貨が円に取って代わる可能性はほぼありません。ですが、世界にはそれをやった国があります。中米のエルサルバドルという国は、ビットコインという仮想通貨を国の通貨にしたのです。この記事では、そもそも仮想通貨とは一体どんなものなのか、そして仮想通貨を日常生活の中で使い始めた国ではどんなことが起きているのか、紹介します。

ビットコインと円やドルの違い

まず、ビットコインについて説明します。日本円はすべて日本銀行が発行していますが、ビットコインにはそのような組織が存在しません。そのかわり有志の人による**「マイニング(採掘)」**と呼ばれる行為によって発行されます。マイニングとは、自分のコンピュータを貸してビットコインの取引情報をインターネット上の記録用紙に記録するのを手助けする行為のことで、これを行うと見返りとしてビットコインをもらうことができます。ビットコインの発行が行われるのは、マイニングの時だけです。

マイニングを通して、インターネット上にビットコインのすべての取引を記録した巨大な台帳が作られるのです。このように台帳を複数のユーザーで編集し、改ざんなどの不正が行われないかチェックする仕組みのことを「分散型台帳」と呼びます。ビットコインの場合は、分散型台帳技術の中でも特に「ブロックチェーン」と呼ばれる技術が使われています。ちなみに、円やドルの台帳は銀行が持っているので「中央集権型台帳」となっています。

ビットコインと従来の通貨が根本的に異なることがわかってもらえたでしょうか。

なぜ注目されているの?

今ビットコインが注目されている理由は2つあります。1つ目はビットコインに限らず仮想通貨は値段の動きが非常に大きいということです。値段の動きが大きい、特に値段が激しく上昇するとそれだけ世間の注目を多く集めます。そして、注目を集めるとまた値段が上がります。このようなサイクルが生じているのです。

もう一つの理由は、ビットコインには金儲けの手段という側面があることです。先ほども説明したマイニングを行えば、自分が持っているパソコンなどの機器を立ち上げておくだけでビットコインが手に入ります。さらに、株の売買のように、買ったときより高い価値を持つビットコインをほかの通貨に変換することで、その差額を儲けとして得ることもできます。例えば、ビットコインを100円で買って、少ししてビットコインの価値が150円になったときに持っているビットコインを円に戻せば、差額の50円が儲けとなります。

ビットコインの負の側面

ビットコインの1つ目の負の側面は、マイニングに大量の電力を消費するということです。2021年6月時点で、世界中でマイニングに年間およそ100TWhという電力量が使用されたと試算されています。これは、2020年度の日本の総消費電力のおよそ8分の1に当たります。電力消費は二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出に直結するので、地球温暖化防止の観点からビットコインは批判されることがあります。

2つ目は、電子機器の価格上昇や買占めを引き起こす可能性があるということです。マイニングには高い計算能力を持つコンピューターが必要なので、マイニングを行う人たちがそのような機器を買い占める可能性があるというものです。

3つ目は、法律の整備が十分でないということです。公的機関がビットコイン関連の規則を十分に整備できていないことを示す例として、日本人の男性が、他人のパソコンを無断で使ってマイニングを行うプログラムをウェブサイトに仕掛けたとして起訴されたという事件がありました。この男性は結局無罪でしたが、金が絡んでいるというマイニングの性質上、今後も様々な事件が起きると思います。

マイニングは通貨を発行する方法としては画期的であるがゆえに、マイニングに関連した懸念点が目立っていると感じます。

世界で初めて仮想通貨を法定通貨にした国

先ほども述べたように、2021年9月7日、エルサルバドルでビットコインが法定通貨になりました。これは、エルサルバドル国内の商品やサービスがすべてビットコインで取引できるようになったということです。

この政策の狙い

エルサルバドルがビットコインを法定通貨としたのは、送金料の安いビットコインを国の通貨とすることで、海外からの送金を頼りに生活している国内の貧困層の生活を改善することや、海外からの投資呼び込みなどで経済を活性化することを狙ってのことでした。人口の7割が銀行口座を持たず、携帯電話の所持率が100%を超えているエルサルバドルにとって、アプリ一つで利用できるビットコインは都合がよかったということも、この政策がとられた理由の一つでしょう。

批判や反対多数

世論調査では国民の7割がビットコインの法定通貨化に反対していて、反対デモも起きました。また、新設された法律でビットコインの使用が強制されていることに対して国内外から批判が集まり、価格変動リスクの大きさゆえに経済的効果を疑問視する専門家もいました。

それ以降の動き

9月7日直後からシステム関係の不具合が相次いだほか、10月には専用アプリで個人情報が盗まれたという報告が700件以上発生するなどトラブルが重なりました。

一方政府は、ビットコイン投資を資金源とし、火山を利用した地熱発電でマイニングのための電力を供給する、ビットコインシティの建設を発表するなど積極的な施策を取り続けています。

経済的効果については、まだ5か月程度しか経っていないこともあり、発表されていません。発表の時まで待ちたいと思います。

ライターのコメント

日本もエルサルバドルのように仮想通貨を国の通貨にする日が来るのでしょうか? 経済について詳しくもなんともない一個人の意見ですが、私は将来的にそうなるのではないかと考えています。今回取り上げたエルサルバドルのケースだけを見ると、専門家が否定的な見方をしたり、トラブルが多発したりと「仮想通貨は国の通貨にはなれない」と思ってしまいます。確かに、この数年で仮想通貨が円に取って代わることはありえないと思います。ですが数十年単位で考えてみると、新しい技術はいつもそうですが、批判や反対を受けながら徐々に浸透していき既存のものに取って代わるのではないでしょうか。未来の日本では(世界中でかもしれませんが)、電子決済の要領で誰もが日常的に仮想通貨をやり取りしているかもしれません。