人口の半数以上がHPVに感染!?子宮頸がんワクチンについて知っておきたいこと

2022年02月27日・ヘルス ・by Newsdock編集部

子宮頸がんワクチンとは

子宮頸がんワクチンは、子宮頚がんを引き起こす恐れのあるヒトパピローマウイルス(Human PapillomaVirus:HPV)への感染を防ぐ効果のあるワクチンで、HPVワクチンとも呼ばれています。日本では2013年以降、副作用などの懸念から接種の推奨は取り下げられていましたが、安全性や有効性に関する議論を踏まえ、今年の4月から接種の推奨が再開されることとなりました。

HPVと子宮頸がん

一生に一度はHPVに感染する?

そもそもHPV自体は、男女を問わず多くの人が感染するといわれている生殖器へのウイルス感染症です。驚くべきはその広がり様で、性交渉の経験のある女性の50〜80%は、子宮頸がんを引き起こすおそれのあるHPVに感染していると推計されています。

HPVが引き起こすもの

そんなありふれたウイルスであるHPVですが、種類もさまざま(遺伝子型の数は150以上)であり、感染したとしても体内で自然に消滅してしまうことがほとんどです。ですが、16型、18型と呼ばれるHPVなどは、感染から数年から十数年をかけて女性の体で子宮頸がんを進行させてしまうおそれがあります。実際、日本では1万人あたり132人が子宮頸がんに感染し、その内30人が死亡しているといわれています。
また、HPVへの感染は子宮頸がんだけではなく、膣がん、陰茎がん、中咽頭がん、肛門がんなどのがんの他、尖圭コンジローマといった性感染症をも、男女双方に引き起こしてしまうリスクもあるのです。

子宮頸がんワクチンの有効性と安全性

有効性

現在定期接種の対象となっている子宮頸がんワクチンは、いずれも「子宮頸がんを引き起こすおそれのあるHPV-16型、18型への感染を防ぐ」効果があるとされています。新潟県で行われた調査では、ワクチン接種者のHPV-16型、18型への感染率が、非接種者に比べて22分の1も低下したことが明らかとなった他、ワクチンと検診とを組み合わせることで、今世紀中に世界全体において子宮頸がんを排除できるのではないかという推測も立てられています。

なぜ接種の推奨が取りやめに?

そのような子宮頸がんワクチンが長らく接種の推奨がなされていなかった理由として、安全性への懸念が挙げられます。ワクチンの定期接種が始まった直後、接種後の痛みや体調不良といったネガティブな側面がメディアで盛んに取り沙汰されるようになったのです。痙攣する女性の映像がテレビで流れたり、「ワクチンの副反応で体に力が入らない、計算ができない」といった旨の書き込みがSNSに載せられたりしました。国民の間に広がっていく不安感。こうした安全性への懸念を踏まえ、当時の日本政府は子宮頸がんワクチンの積極的な推奨を取りやめる決定をしたのです。

安全性は実際どうなのか

その後、子宮頸がんワクチンの安全性についての検証が進められ、2022年4月からワクチン接種の積極的な推奨を再開することが決まりました。
では、当初物議を醸していた、「痙攣が起こる」「体に力が入らなくなる」「計算ができなくなる」といった症状は大丈夫なのでしょうか。名古屋スタディと呼ばれる調査では、これらの重い症状は、子宮頸がんワクチンを摂取していない人にも、摂取した人と同程度の(有意な差のない)割合で現れるということが示唆されました。つまり、「ワクチン接種と、懸念されていた重い症状との間に因果関係はあるとはいえない」ということが示されたのです。
ただ、子宮頸がんワクチンの副反応として、約8割の人に注射部位の一時的な腫れ・痛みが表れているほか、約78万回に1回の割合でアナフィラキシーショックが発生しうるのも確かだ、ということも加えておくべきでしょう。

男性も子宮頸がんワクチンを!?

一連の議論を受け、今年の4月から1997年度〜2005年度生まれのすべての女性が無料で子宮頸がんワクチンを接種できることが決まりました。ですが、世界では男性にも子宮頸がんワクチンを接種する動きがあることを、あなたは知っていましたか?
前述の通り、HPVは男女を問わず、とても多くの人に感染し、がんや性病を引き起こすおそれがある病気です。たとえ男性であっても、子宮頸がんワクチンを接種することは、接種者自身とそのパートナーの健康と未来を守ることに繋がるといえるでしょう。
もっとも、日本では男性の子宮頸がんワクチン接種に対する公費の助成はないのが現状です。接種希望者は、費用約5万円を自己負担する必要があるのです。

終わりに

本記事では子宮頸がんについて見てきました。日本では女性の接種に対するサポートが手厚くなりつつある兆しがみていますが、それでも先進的な国に比べると接種した人の割合はまだまだ低いのが現状です。 接種に不安を感じる人、接種する機会を逃してしまった人、そして男性達にとっても、それぞれが望ましい選択をできるようになることを願います。

参考

日本BD「HPVとは」2021年2月21日閲覧
NHK「子宮頸がんワクチン 来年4月 接種の積極的呼びかけ再開 厚労省」2021年11月26日
NHK「子宮頸がんワクチン 無料接種は1997~2005年度生まれの女性」2021年12月23日
みうら泌尿器科クリニック「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)男性への接種について」2021年2月21日閲覧
厚生労働省「トパピローマウイルスと子宮頸がんワクチン(ファクトシート)」2016年6月
日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」2021年1月8日
KNOW PVD!「ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がんなど)」2021年2月21日閲覧
Newsdock「HPVワクチンのいま」2021年9月15日
毎日新聞「HPVワクチン、任意接種の費用払い戻しへ 推奨中断期間の対象者」2022年1月28日

ライターのコメント

男性である私自身も、本記事の執筆を通して、子宮頸がんワクチンの接種を検討するべきなのかもしれないという考えに至りました。ところが、大学生の私にとって壁となるのが数万円もかかってしまう費用です。男性の場合、20代前半までの接種が推奨されていますが、今後数年の間に議論が加速し、男性の接種に対しても公費助成が認められるかは厳しい面がありそうです。 現在、積極的な接種の推奨が取り下げられている間に自己負担でワクチンを接種した女性に対して接種費用が払い戻される方針が固められています。では仮に数年後、日本で男性の接種に対しても接種が推奨されるようになった際、それまでに自己負担で接種をした男性に対しても同様に接種費用は払い戻されるのでしょうか。 もちろん、男性への積極的接種は、欧米諸国でも一部の国で始まったばかりです。女性と同様に、有効性と安全性の検証や、接種の必要性に関する議論の加速が今、求められているのかもしれません。