IOCとは?オリンピック憲章と矛盾?

2022年01月10日・社会 ・by Newsdock編集部

半年前に東京オリンピックが開催され、約1か月後に北京オリンピックの開催も迫っているこの時期、何かとオリンピックのことを耳にすることも多いのではないでしょうか。 その開催に大きく関わるのがIOCという組織です。昨年は何かと話題になったと思いますが、実はIOCってどんな組織で何をしている組織なのか、知らない人も多いのではないでしょうか。 この機会に少し詳しくなって、北京オリンピックに備えてみませんか。

IOCの定義

IOCはInternational Olympic Committeeの頭文字をとったもので、国際オリンピック委員会のことです。 つまりこの委員会はオリンピック・ムーブメントの最高機関ということになり、もう少し噛み砕くと、IOC はオリンピックが盛り上がるように取り計らう組織なのです。

IOCの仕事

IOCの仕事について、オリンピック憲章には「スポーツの振興およびスポーツ競技会の発展へ全力を尽くすこと」と書かれています。 オリンピック憲章とは、オリンピックに関する決まり事を成分化したものです。ここではIOCの具体的な仕事について、オリンピック競技大会の確実な定期的な開催、環境に配慮したオリンピックが開かれるように取り計らうこと、 スポーツにおける男女平等を推進し、組織の中でも男女平等自体を推進することなどが挙げられています。

オリンピック憲章とIOCの行動

しかし最近、IOCのあり方がオリンピック憲章から外れているという批判がされることがあります。そこで、このようなオリンピック憲章と実際のIOCの行動は対応しているのか、実際のオリンピック憲章に照らして見ていきましょう。

オリンピック競技大会が確実に定期的に開催されるようにする

東京オリンピックの延期問題が記憶に新しいのではないでしょうか。コロナ禍においても大イベントを強行する姿勢に対して、「国民への配慮が足りない」、「お金に目が眩みあまりに自己中心主義である」といった批判がなされました。 しかし一方でIOCの使命に照らしてみると、実行自体は彼らの仕事であったことも事実でした。

平和を推進する活動に参加し、オリンピック・ムーブメント所属員の権利を守るために行動し、オリンピック・ムーブメントの妨げとなるあらゆる差別と闘う

こちらについては2件例を挙げます。

1件目が ウイグル問題 です。中国政府は、中国北西部の新疆地区で、ウイグル族などイスラム教徒の少数民族を弾圧しているとして国際的に非難されています。 習近平国家主席が弾圧を強めたきっかけは、2014年4月30日に新疆ウイグル自治区で起きた「爆破テロ事件」とされており、中国当局はテロ対策として締め付けを強化し、 ウイグル民族らイスラム教徒を敵視するかたちで次々と強制収容所へ入れていきました。差別と闘うと謳うIOCですが、ウイグル問題について真剣に取り組むとしたものの、 国連安全保障理事会や主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)でも解決できないような問題をIOCが解決することは無理だと述べています。

2件目が、 中国の女子テニスの彭帥選手をめぐる問題 です。彼女が中国の元副首相との不倫関係を告発後に一時消息不明となったことについて、人権侵害だとして各国が非難の声を強めています。 この問題に対しIOCのバッハ会長は、彭帥選手が消息不明だった段階でテレビ電話を独自に行って彼女の無事をアピールし、問題の一刻も早い幕引きを図りました。 こうした姿勢は、今年2月に控える北京オリンピックを見据えて人権よりも中国との関係を重視しているように映り、人権侵害の問題を白紙化しかねないとしてさらなる批判を招いています。

スポーツや競技者が、いかなるかたちにおいても、政治的あるいは商業主義的に悪用されることに反対する

こちらについても、2点挙げられます。

1点目が、 オリンピックとスポンサーの関係 が挙げられます。東京オリンピックでは、競泳の決勝戦が午前中に設定されました。しかし多くの国際大会では決勝戦は夕方から夜が一般的であることから、 選手は数ヶ月前から試行錯誤しつつ調整を進めねばなりませんでした。これは、スポンサーとしてIOCに多大な放映権料を支払うアメリカのテレビ局NBCユニバーサルの意向に従ったもので、北アメリカで視聴率が最も高い時間に放映するよう設定されていました。 このような商業重視で選手ファーストではない姿勢に疑問の声が上がりました。

2点目が、 ロシアのドーピング問題 です。ロシア選手団は2015年に国家ぐるみのドーピング問題が明らかになり、国際大会から3年間排除される処分を受けていたのですが、 IOCは、国家ぐるみのドーピング疑惑がかかっていた選手に対しリオ大会出場に道筋を残し、出場の判断は各競技団体にまかせるという判断を下しました。丸投げで、かつスポーツマンシップを最優先にしなかったこの判断に対し、 多くの失望の声が上がりました。

まとめ

以上のように、オリンピック憲章とIOCの行動は一致していない点も見受けられます。しかし、オリンピック憲章にそぐわないIOCが一方的に悪いかと言うと、そうではないかもしれません。 オリンピック憲章はいずれも、オリンピックが本当に純粋なスポーツ大会であることを前提としているように見受けられます。しかし、この規模の大会が本当にそう あることができるのか、疑問の余地も同時に残ります。 IOCの仕事や意義について、再度立ち返る必要があるのかもしれません。

参考

日本オリンピック委員会「オリンピック憲章 Olympic Charter 1996年版」2021年1月10日閲覧
東洋経済online「池上彰が解説『なぜ中国はウイグル弾圧?』の核心 そもそも同じ国でも文化や言葉が全然違う」2021年8月5日
産経新聞「中国・前副首相と不倫、テニス選手が告白 衝撃広がる」2021年11月3日
産経新聞「競泳は24日開幕 異例の『午前決勝』に試行錯誤」2021年7月23日
BBC NEWS JAPAN「中国のウイグル族弾圧は『地獄のような光景』=アムネスティ報告書」2021年6月11日
J CAST ニュース「IOCがビビった『冷戦復活』露ドーピング問題と国際政治」2016年7月29日

ライターのコメント

が、純粋なスポーツ大会にとどまれないというのは仕方のないことだと思います。要するに、大国と憲章のような純粋な理想との間で板挟みになっているのがIOCということになり、だからこそその動きは一貫しないのだと思います。IOCの人権問題への姿勢は決して肯定できるものではありませんが、IOCなりの苦悩も考慮しつつ最善の道は何か考えていきたいと思います。