デジタル庁は何をするところ?

2021年12月30日・経済 ・#2021年重大トピック ・by Newsdock編集部

2021年9月1日に発足したデジタル庁。でも、私たちの生活に何をもたらすのでしょうか? そもそも、どうして発足したの? 今年の重大ニュースを一緒に振り返っていきましょう。

なぜデジタル庁は発足した?

コロナ禍で起こった混乱

新型コロナが猛威を振るう中、生活のさまざまな場面がオンラインに置き換わっていきました。しかしオンライン化は、紙やはんこ、対面のシステムが広く浸透していた日本の自治体に混乱を招いたこともあったようです。

2020年春に行われた10万円給付では、国民は「郵送による申請」に加えて「オンライン申請」を選ぶことができました。その目的は、手続きを簡単なものにし、自治体の負担を減らすためです。しかし、情報の誤入力が起こったり、同じ世帯が給付金を何度も申請してしまったりするなどのトラブルが相次ぎ、 多くの自治体はそうした誤りを目視で確認する こととなってしまいました。

また、毎日発生する新型コロナ感染者に関する情報も、多くの自治体で病院から送られてきた FAXをもとに保健所がデータを手入力する ことによってやりとりされていたことが明らかとなっています。保健所の仕事量が増えたことで、リアルタイムでの感染状況を把握しづらくなってしまい、感染症への対応がより難しくなっていることが問題視されたのです。

日本はデジタル後進国?

では、なぜこのような混乱が起こったのでしょうか。理由は、日本ではデジタル化がまだそれほど進んでいなかったことにあります。

前述の通り、コロナ禍前の日本では、公的な手続きには「紙・はんこ・対面」がつきものでした。個人情報を管理する番号も、市区町村の窓口では「住民票コード」なのに、国民年金基金では「基礎年金番号」である、というように、行政団体によってバラバラであったことも、デジタル化を進める妨げとなっていたようです。

デジタル庁、発足!

このような日本の状況を改善するべく、発足したのがデジタル庁です。ここからは、デジタル庁が何を行っているのかについてみていきましょう。

デジタル庁は何をするの?

マイナンバーの活用

行政機関のデジタル化を進める鍵となるのが、マイナンバーです。 マイナンバーは、将来的には多くの行政機関で使えるようになる12桁の番号 で、すでに すべて全ての国民に割り振られています。

そのマイナンバーを証明するためのカードが、マイナンバーカードです。現在では、これさえあれば以前のように役所に行くことなく、コンビニで住民票などが受け取れるようになっています。さらに、マイナンバーカードにはなんとICチップも搭載されています。これを読み取ることで、一部の行政手続きはスマホで完結できてしまうのです。

また、2021年10月には、マイナンバーカードを健康保険証として使うこともできるようになりました。今後は運転免許証として使えるようになったり、また銀行口座との連携も進められたりしていく方針で、 生活のより多くの場面でマイナンバーカードが利用できるようになる 見込みです。

行政のデジタル化と人材確保

コロナ禍の反省を踏まえて、日本の自治体のデジタル化を進めていこうという取り組みも盛んです。デジタル化が今まで進まなかった背景には、 「デジタル化をしたくても、その人材が足りない」 という自治体の本音があったようです。そもそも日本全体の傾向として、デジタル人材のほとんどがIT企業に在籍していて、ITに関係する業種でない企業や、自治体でデジタル化を進めることのできる人材が乏しい、という現状があります。そこでデジタル庁が行おうとしているのが、 デジタル人材の確保と育成です。

具体的には、国家公務員採用試験でのデジタルに長けた人材の採用、職員に対して行う研修など、とされています。

また、行政がデジタル化しても、国民がそれを利用できなければ意味がありません。学校教育でのプログラミング・ITリテラシーといった情報教育を充実させることで、日本全体としてデジタルリテラシーを向上させることも、取り組んでいく課題の一つとして挙げられています。

デジタル庁のこれから

進まないマイナンバーカードの普及

日本のデジタル化を進めるデジタル庁ですが、いくつかの課題もあります。その一つが、デジタル化の鍵となるマイナンバーカードの普及と利用が伸び悩んでいることです。

実際のところ、「現時点でマイナンバーカードがなくても十分」という考えの国民が多いようです。というのも、生活の中でマイナンバーカードが絶対に必要な場面というのは、まだ限られていますから。それに加えて、取得したとしても、「大事な情報を政府に渡すのが怖い」という心理から銀行口座との連携をためらうなど、マイナンバーカードを最大限利用している人も未だ少ないのが現状です。

デジタル弱者を取り残さないために

いうまでもなく、日本は高齢者の割合の多い高齢化社会です。それはすなわち、デジタル機器の扱いにあまり長けていなかったり、スマホを持っていなかったりする、いわゆる「デジタル弱者」の割合が多いということも意味しています。

デジタル庁は、「誰ひとり取り残されない、人に優しいデジタル化を」と掲げています。日本の高齢者へのデジタル関連の支援も、今まさに求められているのです。

参考

内閣府「令和3年度経済財政白書-レジリエントな日本経済へ:強さと柔軟性を持つ経済社会に向けた変革の加速-」2021年9月24日
デジタル庁「政策」2021年12月25日閲覧
金融財政ビジネス「遅れる行政のデジタル化」2020年8月27日
NHK「新型コロナ 国の感染者データ集約システム 入力が現場の負担に」2020年12月13日

ライターのコメント

日本におけるデジタル化の取り組みとその課題について、まとめてきました。その重要な鍵となるのがマイナンバーカードであるということは、文中でもたびたび紹介した通りです。つまりそれは、私たち国民がマイナンバーカードの取得に積極的になれるかどうかが、日本のデジタル化を進めるうえで非常に重要だということを意味しています。 私も先日マイナンバーカードを取得しましたが、利用したことは一度しかありません。なので、文中で紹介したような、「マイナンバーカードがなくてもなんとかなるから取得しない」という心理に少し共感を覚えます。 ですから、「マイナンバーカードがなければできないこと」をもう少し増やしてもいいのではないのかな、と感じました。国民がマイナンバーカードを取得する理由を強気に確保していくことが、日本のデジタル化を進めるうえで重要となってくるのかもしれません。