バイデン政権、1年目にして大ピンチ!(前編)

2021年12月23日・国際 ・#2021年重大トピック ・by Newsdock編集部

2021年1月20日(現地時間)、ジョー・バイデン氏の第46代大統領就任式が行われました。民主党の候補者として出馬したバイデン氏(当時77歳)は、昨年の大統領選で共和党のドナルド・トランプ元大統領をしりぞけ、見事に勝利しました! 史上最高齢で晴れて大統領となったバイデン氏ですが、先の見通しはお世辞にも明るいとはいえません……。この記事では、バイデン大統領就任からまもなく1年を迎えることを踏まえ、バイデン氏の当選から今までの一連の流れを解説していきます! なお、 本文には見慣れないアメリカ政治特有の用語が多く出てくると思いますが、その都度説明を加えている (つもりです)。この記事を読んだ皆さんが、アメリカの政治や社会について興味を持っていただけるととても嬉しいです!

バイデン大統領の勝因

今回の大統領選挙、「トランプはコロナ禍でいろいろやらかしたし、バイデンが普通にやれば勝てるでしょ」と考えた人もいるかもしれません。しかし、アメリカでは、 現職の大統領を政権の座から降ろすのは簡単ではありません。 実際、今回の選挙を除いて、第二次大戦後以降の現職大統領は12人中8人が再選を果たしています。こうしたハンディキャップがある中で、バイデン氏はなぜ勝利できたのでしょうか。

バイデン氏の勝因は、大きく分けて2点 あると考えられています。

若者層の支持

1点目は、 ミレ二アル世代・Z世代と呼ばれる、20代の若者層の支持を取り付けた ことです。この世代層は、30代以上の層に比べて移民・難民の割合が高く、リベラル(ざっくり言うと、多様性を重んじる立場のことで、保守と反対の政治的なポジションだと捉えてください。)寄りの立場を取る傾向にあるとされています。ニューヨークタイムズの出口調査によると、今回の選挙では20代の62%がバイデン氏に票を入れていて、トランプ氏の35%を大きく上回っています。バイデン氏が若者からの票集めに成功したことは、州ごとの統計からも分かります。例えば、今回大接戦となったジョージア州では、20代有権者の57%がバイデン氏に投票した一方、トランプ氏は39%に留まり、約19万票もの差がつきました。同州でのトランプ氏とバイデン氏の差が1万票強にとどまったことを考えると、まさに若者の声が選挙結果を変えたといえるでしょう。

黒人からの支持

2点目は 、バイデン氏がスイングステートで黒人票をガッチリと押さえ た点です。 大統領選挙を制するうえでカギになるのが、両党ともに支持基盤が固まっていないスイングステートと呼ばれる州 です。今回スイングステートの1つであったペンシルベニア州では、州人口の44%を占める黒人有権者の約9割がバイデン氏に投票したとされています。黒人の民主党候補への投票率が80%前半にとどまっていた2016年の大統領選に比べて、大きな伸び幅となりました。

もっとも、バイデン氏が勝利した最大の要因としては、トランプ氏に対する不信感が募った結果だ との見方が強くあります。例えば、人種差別への向き合い方です。アメリカでは、2020年5月、白人警官が黒人男性を膝で絞め殺した事件(被害者の名前にちなんで、ジョージ・フロイド事件といいます)をきっかけに、それまで人種差別問題にぬるい対応しかしてこなかったトランプ政権に対する抗議の声がいっそう強まりました。そこで、「アメリカから人種差別をなくします!」と主張したバイデン氏は、全国規模で黒人票の92%をゲットしました。この数字自体は前回の選挙とは変わりませんが、今回黒人の投票者数が過去最大を記録したことからすれば、人種問題への取り組みが結果を左右したといって差し支えないでしょう。 加えて、新型コロナ禍での死者数の増加や経済停滞 が挙げられます。トランプ氏は、“Make America great again!”というスローガンの下、アメリカの経済を立て直し、すべての国民がその恩恵にあずかれるようにするとの公約を掲げました。しかし、コロナ前までは好調だった経済状況も、2020年度末のGDPは前年比-3.5%と、2008年の金融危機を上回るほどの落ち込みとなり、約7人に1人が失業しました。2020年後半には経済は少し回復したものの、ITや金融業界、富裕層など、社会の一部にしか利益が及ばなかったことに、世論の不満が高まっていきました。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、昨年の大統領選挙の時点でアメリカ国民の死者数は20万人を超え、第2次世界大戦時の半分以上にのぼりました。その結果、前回の選挙でトランプ氏を支持した地方では失望の声が広がり、民主党が2016年の選挙戦から10%近く地方の得票を伸ばすきっかけとなりました。こうやって見ると、バイデン氏は“Yes we can!”というスローガンのもとに国民から圧倒的な支持を得て勝利したオバマ前大統領とは異なり、 トランプ氏に比べて「マシだから」票が集まった という側面もあるかもしれません。実際トランプ氏も敗れはしたものの、現職大統領としては最多となる7100万票以上を獲得したのですから。

このように辛勝したバイデン氏は、就任まもなくいばらの道を歩むことになります。後編では、バイデン政権はなぜ迷走しているのか、また今後どのような方向に進んでいくのかについて詳しく解説していきます!

バイデン政権、1年目にして大ピンチ!(後編)

参考

AFPBB News「米大統領選、現職敗北は戦後3人のみ トランプ氏再選なるか」2020年11月1日
Business Insider Japan「バイデン勝利を支えた、『若者、黒人票』。80万票を掘り起こした1人の黒人女性」2020年11月10日
CIRCLE "Election Week 2020: Young People Increase Turnout, Lead Biden to Victory" 2020年11月25日
Pennlive "Black voters in Pa. played a pivotal role in 2020 election, tipping Joe Biden to victory" 2020年11月13日
Inquirer "For Philadelphia's Black voters, the 2020 election results were 'inescapable and overwhelming'" 2020年11月13日
BuzzFeedNews "This Chart Shows Philadelphia Black Voters Stayed Home, Costing Clinton" 2016年11月19日
Pew Research Center "Behind Biden's 2020 Victory" 2021年6月30日