2022年における新型コロナウイルスと社会—1年の振り返り

2022年12月30日・社会 ・#2022-23特集 ・by ろーど

新型コロナウイルスのパンデミックが起こってもうすぐ3年となります。今年は感染拡大当初に比べると社会経済活動が活発になった一方で、変異株による感染の「波」も起こりました。自分があるいは知り合いがコロナにかかったことがあるという人は多いと思います。「Withコロナ」という言葉から連想されるように、コロナが生活の中で身近になってきたのではないでしょうか。もうすぐ2022年が終わりますが、ここで今年を中心にこれまでの新型コロナウイルスについて振り返ってみましょう。

コロナ流行のこれまで

感染の波と変異株

感染が拡大していく中で、ある一定の時期に急激に感染者数が増える「波」がこれまで何度か起こりました。 この「波」の際に猛威を振るったのが新型コロナウイルスの変異株でした。
ウイルスは遺伝情報をコピーして繰り返し増殖する中で、ミスにより、遺伝情報が違うウイルスが生まれることがあり、このことを「変異」といいます。時期の経過とともに、新型コロナウイルスの変異株は次々に現れて、中には感染力を強めたりワクチンの効果を下げたりする変異株もあり、そうした変異株がさらなる流行を引き起こした一因となったわけでした。 ここでこれまでに注目された変異株についていくつか振り返ってみましょう。

・従来株
変異する前の新型コロナウイルスは、2019年12月に中国の武漢で初の感染者が報告された後、感染が拡大していき、日本では主に第1波〜第3波(2020年3月〜2021年3月ごろ)を中心に確認されていました。

・アルファ株
イギリスで2020年9月に初めて確認された変異株で、日本では第4波(2021年4月〜同年6月ごろ)の流行の大きな要因となりました。従来株よりも感染力が強く、重症化のリスクも大きいといった性質があります。当時、関西で従来株からアルファ株への置き換わりが急速に進行して感染拡大したことを受けて、一部の関西地域には緊急事態宣言が出されました。

・デルタ株
インドで2020年10月に初めて確認された変異株で、日本では第5波(2021年7月〜同年9月ごろ)で大きな流行を引き起こしました。デルタ株は従来株よりも2倍、アルファ株よりも1.5倍程度、感染力が強いと言われており、感染した場合に入院に至るリスクも高まっている可能性も指摘されました。第5波は、東京オリンピックの開催とともに、このデルタ株によってそれまでで最も感染拡大のピークが大きい波となりました。

・オミクロン株
南アフリカで2021年11月に初めて確認された変異株で、日本では第6波以降(2022年1月〜)感染者が相次いで確認されました。オミクロン株は、これまで確認されてきた変異株よりも感染力がさらに高いとされている一方で、入院に至るリスクや重症化リスクが低い傾向にあると言われています。

ワクチン接種率

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、コロナワクチンの製造が始まり、2021年の冬から春にかけて医療従事者や高齢者等を対象に、同年夏前には一般の人々を対象にワクチン接種が始まりました。ワクチン接種が始まってからおよそ1年半が経ちますが、これまでどれくらいの割合の人がワクチンを接種したのでしょうか。

下の図にある通り、1、2回目については全人口のおよそ5分の4、3回目については全人口のおよそ3分の2の人が接種していることがわかります。4回目については、高齢者の方や基礎疾患を有する方、重症化リスクが高い方等を主な対象として接種が行われています。

また、オミクロン株対応のワクチン接種は今年の9月から始まりました。対象は、従来のワクチンで2回目までを終えた12歳以上の人で、接種率は35.0%とおよそ4400万回接種されたことになります。

2022年のコロナ対応

コロナ流行3年目となった2022年。変わらず感染対策は取りながらではありますが、これまであった規制が緩和されて、消費喚起策が取られた1年となりました。

入国水際対策の緩和

今年の10月にはコロナの水際対策が大幅に緩和されました。この緩和では1日あたり5万人としていた入国者数の上限が撤廃されるとともに、ツアー以外の個人の外国人旅行客の入国が解禁されました。また、新型コロナウイルスの感染が疑われる者を除き、全ての入国者について、原則として入国時検査を行わず、宿泊施設等での待機や公共交通機関不使用が求められなくなりました。引き続き、3回分のワクチン接種証明書あるいは出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出のいずれかは求められますが、今回の緩和によって、制限がほぼコロナ禍前の状態に戻ることになります。

今年は、この10月の規制緩和の前にも段階的に緩和が進められてきました。こうした緩和を受けて、入国者数はどれくらい増えたのでしょうか。例えば10月について年別で見てみると、コロナ禍前の2019年10月はおよそ223万人だったのが、コロナ禍に入って入国規制が出ていた2021年10月は約1万人と激減しました。しかし、今年2022年の10月はおよそ45万人とやはり規制緩和によって入国者数が増えていることがわかります。コロナ禍前の数字にはまだ遠く及んではいないものの、規制がほぼ無くなった今、年明け以降も増えていくことが予想されるでしょう。

全国旅行支援

水際対策の緩和と同時に「全国旅行支援」が始まりました。これは、コロナ禍で大きな影響を受けた観光業界を支援するために実施されたものです。日本国内の居住者を対象に、旅行代金の割引や土産店などで使用できる地域クーポンを進呈するのが主な仕組みです。当初は年内までの予定でしたが、年明けの1月10日からも引き続き実施されることが決まりました。年内のキャンペーンよりも規模は縮小されるものの、コロナ禍前の水準にまだ戻っていない観光需要を後押しする狙いで行われます。
その結果、今年の10月の日本人の延べ宿泊者数はおよそ4200万人で、なんとコロナ禍前の2019年の同月よりも5.8%増加しました。10月から始まったこのキャンペーンによって、国内旅行者数が増えたことが伺えます。

2020年には、「全国旅行支援」と同様に観光需要の促進を図った「Go To トラベル」キャンペーンもあり、当時は、キャンペーンの実施によって感染拡大を招いたのではないかという批判もありました。しかし、今回の「全国旅行支援」は、国の事業として一つの事務局が一括して対応していた「Go To トラベル」とは異なり、窓口は各都道府県にあります。ある自治体で感染が急拡大した際に中止できるといったように、より柔軟な対応ができるようになった点は望ましいという評価もあります。

その一方で懸念されている課題もあります。それは「急激な需要増加による人手不足」です。感染拡大の影響で観光客が減った時期に、働きがいやよりよい給料を求めて、宿泊業や飲食サービス業での仕事を辞める人が相次ぎました。その状態のまま、観光需要が回復し、業務の担い手が足りなくなってしまうという状況に陥っているというわけです。この問題に直面しているところでは、これまでより給料を上げてスタッフを募集していますが、業種によってはすぐに補充するのが難しいものもあり、人手の確保は簡単ではないという声がさまざまなところで上がっています。

第8波に向けた対策

今年の10月から感染者数の増加傾向が続いてきています。この「第8波」としての流行に政府はどのように対応しているのでしょうか。

感染状況の新分類

政府は今年11月に、新型コロナの「第8波」に備え、新たな方針を出しました。この方針では、感染状況のレベルを4段階に分類しています。
感染者数が徐々に〜急速に増える段階をレベル1〜2とし、この段階では、引き続き基本的な感染対策や医療提供体制の強化などが中心となります。
感染者数が今夏の「第7波」並みかそれを上回る状況はレベル3とされています。レベル3は「感染拡大期」と位置づけられており、病院に患者が殺到して重症化リスクが高い人の即時受診が困難になる等の恐れがあります。このレベルでは、感染拡大が著しい地域の住民にリスクの高い行動を避けるよう、各都道府県レベルで「対策強化宣言」の要請が可能になります。
そして、感染状況が政府の想定を大きく上回り、医療全体が機能不全の状態になるなどした場合は最も深刻な段階としてレベル4となっています。「医療ひっ迫期」とされているこの段階では、旅行・帰省の自粛やイベントの延期など、必要最低限の外出に抑えるよう強力な要請ができるとしています。
緊急事態宣言などの強い制限は行わず、社会経済活動は維持しながらも、状況に応じて感染流行に対応していく方針となっています。

インフルエンザとの同時流行

新型コロナウイルスに加えて懸念されているのがインフルエンザの流行です。 これら2種類のウイルス、すなわち「フルロナ」に同時感染すると重症化のリスクが高まるとの報告もあり、専門家は「予防接種を受け、備えてほしい」と注意を呼びかけています。 厚生労働省によると、コロナ・インフルの同時流行のピーク時には1日あたり75万人の感染者(コロナ45万人、インフル30万人)が最悪発生するとの想定を出しています。 12月中旬現在、新型コロナウイルスの1日あたりの新規陽性者数は少しずつではありますが増加傾向を示しています。また、全国の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は例年の水準を大きく下回っていますが、県によっては「流行が始まった」と発表しているところもあります。

これから、年末年始冬休みシーズンに突入し、人々の全国的な往来も予想されます。これまで同様に大切なのは、手指の消毒や近距離の会話時のマスク着用、換気の徹底といった基本的な感染対策です。ニュースやお知らせなどで見る政府や自治体の呼びかけにもある通り、一人ひとりの感染対策への協力が求められるでしょう。

参考

国立感染症研究所「東京都での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行(2020年1~5月)」2022年12月30日閲覧
Yahoo!ニュース「【図解】新型コロナ「第6波」とは? 「第1波」から振り返る」2022年1月13日
NHK「オミクロン株の症状や感染力などコロナ変異ウイルス最新情報」2022年12月30日閲覧
日本医学臨床検査研究所「新型コロナウイルス変異株とは」2022年12月30日閲覧
首相官邸「新型コロナワクチンについて」2022年12月22日閲覧
国立感染症研究所「新型コロナワクチンについて(2021年8月5日現在)」2021年8月13日
厚生労働省「追加接種(4回目接種)についてのお知らせ」2022年12月30日閲覧
NHK「オミクロン株対応ワクチン 国内の接種率25.5% (12日公表)」2022年12月12日
NHK「水際対策きょうから大幅緩和 入国上限撤廃 個人旅行も解禁」2022年10月11日
FNNプライムオンライン「【速報】10月の外国人入国者数 去年の40倍以上に 水際対策緩和の影響も コロナ禍前の2割程度」2022年11月15日
NHK「「全国旅行支援」きょうから 地域のにぎわい回復につながるか」2022年10月11日
ニッセイ基礎研究所「宿泊旅行統計調査2022年10月~全国旅行支援の開始を受けて日本人延べ宿泊者数は大幅に回復」2022年12月1日
NHK「「全国旅行支援」年明けは1月10日から実施へ 斉藤国交相」2022年12月13日
NHK「広島観光は回復も、人手不足が新たな課題 宮島の旅館では」2022年11月24日
NHK「全国旅行支援・水際対策の緩和 開始1か月 新たな課題も」2022年11月11日
毎日新聞「新型コロナ 「対策強化宣言」を新設 第8波対策案、感染レベル4段階」2022年11月11日
NHK「政府 新型コロナ「第8波」に備え新方針外出自粛など要請も」2022年11月10日
東京新聞「<新型コロナ>第8波で感染拡大しても会食・行動制限せず 東京都が方針明示」2022年12月1日
読売新聞「同時感染「フルロナ」へ備えを…重症化リスク懸念、死亡率はコロナ単一の2・35倍か」2022年10月26日
NHK「インフルエンザ 流行期入りの水準大きく下回る 患者数は増加」2022年12月16日
NHK「国内の感染者数・死者数」2022年12月30日閲覧