QuizKnock【クイズノック】の2人にニュースについて聞いてみた!

2022年09月09日・教育 ・#インタビュー ・by Newsdock編集部

QuizKnock【クイズノック】の2人にニュースについて聞いてみた!

クイズ王である伊沢拓司さん率いる東大発の知識集団、QuizKnock【クイズノック】。

クイズノックが6月12日に開催した学生記者発表会「QK REPORT」にnewsdockのメンバーが参加して話を聞いてきました。テーマは「ニュースの考え方」。クイズノックの方々がニュースに対してどのように向き合っているかについて、クイズノックを代表して、CEOで番組コメンテーターを勤めることもある伊沢拓司さん、「ナイスガイの須貝です!」でおなじみの須貝駿貴さんのお二人が答えてくれました!それでは取材の様子をどうぞ!

ニュースを見始めたきっかけ

ークイズノックには「楽しいから始まる学び」というコンセプトがあると思うのですが、今回はいかに楽しくニュースを学べるかについてお伺いしていきたいと思っております。本日はよろしくお願いいたします。

伊沢さん・須貝さん「よろしくお願いいたします。」

ーまず最初に、お二人は普段どのようにしてニュースをご覧になっていますか?

伊沢さん「例えば撮影の合間にTwitterを見ながら、いきなり出てきた新しいニュースについてクイズとしてみんなで解く、みたいなことをやっていますね。『M-1の決勝進出者が10人決まりました。誰でしょうか』のような感じです。クイズをやっているというのと、知識が好きだというので関心はあるのかなと。ただやっぱり細かなジャンルに関しては、『このジャンル詳しいよね』『このジャンルあんまり興味ないな』みたいなのは、どうしてもあります。例えば、須貝さんは財テク系のニュースは多分めちゃくちゃ詳しいよね。」

須貝さん去年あたりから財テク(貯金や株式投資)にハマりまして。それにハマったのが関心を持つようになったきっかけですかね。『株価が下がって俺の金がなくなるぞ』って思うと、すごく興味ある話題に思えてきた。僕は財テクにハマったみたいなことがきっかけでニュースが自分ごとになった瞬間があって、それまでよりも強く興味を持てるようになりました。」

伊沢さん「僕は結構、悲しきクイズサイボーグみたいなところがあるので、中学生の頃に、『クイズをやっている以上、全部知ってなきゃいけない』という観念から入っちゃったんですよね。だからモチベーションとかではなく、強迫観念でニュースを見ていた部分があって。でもクイズ王とメディアで呼ばれるようになってから、いよいよ全部知らないと仕事に差し障りが出るようになった。それからは機械的にではなくて、『これって背景どうなってるのかな?』というところまで知らないとボロが出るな、って思い始めた。僕はメディアに出るようになったことが深くニュースを知るきっかけになったとすごく思います。責任意識が大事ですね。」

ニュースを「自分ごと化」してもらうには

ーお二人はそれぞれ、財テクへ関心を持ったことやメディアに出演したことをきっかけに関心が強くなったんですね。ただ、高校生や大学生の中にはお二人のようにニュースを自分のこととしてとらえる自分ことが難しい人もいると思います。こういった人たちに向けて伝え方で工夫しているところはありますか?

伊沢さん「(伊沢さんの中学時代のように)強迫観念があるのは凄い便利だなと思うんだけど、楽しくないし、難しい。やっぱり僕は、理解できた喜びとか、『こんな視点があるんだ』みたいな、何かをゲットした喜びを主軸にしたいなと思っているんですよね。その喜びを感じられない人は、ちょっとやっぱりハードルが高いかもしれない。現実問題として(そのニュースを)知らなきゃ明日死ぬのか、と言われたらそんなことはなくて、そこに嘘はつきたくないなとすごく思っている。それでも、『知ったらちょっと嬉しい』『自分が進化してるよね』というような、進化の喜びみたいなところをもっと訴えられればと思ってますね。

ーやはりそういった瞬間を体験してもらうのがいいのでしょうか?

須貝さん「そうですね。ニュースにもレベルというか、扱っているものに違いがあって。M-1の出場者の話も、僕たちやnewsdockの皆さんが知ってもらいたいような世界情勢やGDPの話も、どちらもニュースですよね。後者のニュースに辿りつきづらい中高生や大学生もいると思うので、それが結びつくようなチューターみたいな人が近くにいて、その人にどう結んでもらうか、その人とどう結びつくかは僕も考えたいなと思っています。『人工関節ができました』という医療ニュースは、僕にはそれほど大事なニュースには聞こえないですけど、例えば関節を怪我した野球部の友達がいたらすごく大事なニュースに思えると思うんです。そうしたら、ほかの医療の会社が何をしているかを調べるかもしれない。**『自分ごと化』するんですよね。**そこから例えば、僕や関節を怪我した友達に対して、『新しい人工関節ができたらしい』というニュースを教えてくれる人が出てくるとか、さらに広く繋がっていけたら理想ですね。」

伊沢さん「QuizKnockを始めた時に、水上*にオートファジーのニュースを書いてもらったんだよね。大隅良典教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したときに、オートファジーって何、と。**でもそれを熱っぽく語る人がいると、『なんかすごい』って感じるんだよね。**僕もラジオのコーナーでクイズを出すときは、その凄さを声色に乗せるように意識してます。ほかにも須貝さんが(YouTubeで)ノーベル賞関係の解説してくれたりとか。**熱っぽく『すごい』って言われると、伝播するから。**やっぱり、解説員が見る人と同じテンションで語っているのは見ていて面白くないんじゃないですかね。やはりテンションという部分は大事だとすごく思います。」

※水上颯さんのこと。元クイズノックのライターで「全国高等学校クイズ選手権」で優勝した実績を持つ。TBS系列の『東大王』に出演した際には「東大医学部のプリンス」の異名を誇った。現在は研修医となり医学の道に進んでいる。

ニュースを見るとき、語るときに気をつけていること

ーニュースを見る上で気をつけていることはありますか?

伊沢さん「**僕たちはQuizKnockを始める時に、『能動的に考えてもらうためにクイズというツールを使う』という方針を掲げたんですね。**なので、自分の頭で考えて、筋が通ってるかなと考えてもらう。そうやって咀嚼していく習慣を持ってもらうことは僕は大切だと思うし、自分もそうするように心がけてます。難しいんですけどね。」

「論理が通ってるからと自己判断すると陰謀論にはまるという論調もあるわけですけど、ここに対して僕が伝えたいのは、**『真実は必ずどこかにある』と思わない姿勢。**これは僕が大学で学問をやっていてとても大事だなと思ったんですけど、ニュースに対してもそうだなと思っていて。クイズの歴史をまとめた本を出した時、当時の新聞や雑誌を国立国会図書館で読んだんです。資料では番組の終了原因が色々と推察されていたんですが、よく聞き込みをするとその推察は全く外れていて、ただ単に、スポンサーのお金がなくなったとか、事故があったみたいな理由だったんです。歴史というのは必ずしも何かしらの論理関係のみによって動いているわけではなくて、めちゃくちゃ偶然が起こったりもする。そうなったときに、『じゃあ何が本当か』というのは、ニュースの発生の元のところに行っても分からなかったりするんですよね。なので、そのファストに真実の根元にたどり着ける」という観念をまず捨てて考え、最終的に結論は出ないかもしれないけれど、論理通っているか、ニュースはどう起こったのかを追い続けていく。『ゴールがないかもしれないけど追う』という姿勢はとても大事かなと、僕はニュースを見ていて思います。」

ーニュースを見ていると、見る角度で景色が変わることが多々あります。最近私が目にしたものでは、ロシアに住んでいるウクライナ人が、ウクライナ信仰のことを「でっちあげだ」と本気で話しているケースです。伊沢さんはコメンテーターとしての仕事もなさっており、影響力もあると思います。そうした中で「真実が必ずしもあるとは限らない」という姿勢をどう視聴者に伝えていけばいいのでしょうか?

伊沢さん「**必要なことは是々非々をちゃんとやるということ。**テレビ局の人たちも完璧ではないから、『これはダメですよ』とオンエア中でもちゃんと言う覚悟で出ていますね。それで(コメンテーターを)辞めてもいいと思ってる。何なら、目立たなくてもいいなと思っていて。『いた意味ある?』ってTwitterに書かれるぐらいで全然いいと僕は思っています。言うことがないときや言わなくていいときもあるので。」

「やっぱり、『僕が何かできるな』と思ったときは必ず何か一つ視点を足そうと思っています。『このニュースはこういう角度から見るとこうなんじゃないかな』とか。ウクライナの話でロシア側から見たら、というのは安易に言えないけれど、**過度な相対主義に陥ることのないような視点の足し方は、すごく大事にしている。具体的に言うと、罪を犯した人に、『けしからん、考えられん』ではなくて、『じゃあなんでそこに陥ったんだ?』『こういう状況はなんで生まれてしまったんだっけ?』というような視点を足すことを、メディアに出ることで何かしらのメリットを残す必要がある人間として心掛けていると思います。**あと、須貝さんが別のインタビューで言っていたように、『難しいことを分かりやすく伝えるのが頭がいい人だ』と思われがちですがそんなことはなくて、**難しいことは専門用語を使わないと語れなかったりするわけですよ。例えば国際情勢では、兵士に対して食糧なり何なりを届けることを兵站(へいたん)とかロジスティクスと言う必要がある。なので、『難しいことを分かりやすくファストに伝えるのが、頭が良くて素晴らしいコメンテーターだ』なんて考え方を、見ている人に捨ててもらうことも僕の仕事だなと思っていますね。**あえて難しい言葉を使うこともある、でも使ったあとに解説します。そういうのは意図的にやって、何かメディアの表現の場を変えていけたらな、という風に個人的には思っていますね。」

ニュースを楽しく学ぶためには

ー最後に、ニュースを楽しく学べるようにする、より広く知ってもらうためには何が一番大事になるでしょうか?

伊沢さん「僕はテレビに出たりニュース番組を見たりして、『なるほどね』って言ってくれる人がスタジオに欲しいな、と思うんですよね。『分かった、勉強になったわ』っていうリアクションをする人って、情報番組だと必ずいるじゃないですか。でもなぜかワイドショーにはいないんですよね。『みんなが知ってないといけない』みたいな空気が流れてて。その場で知って、『なるほどニュースを知れてよかったな、こういう学びが得られたから明日からこう変わっていくわ』みたいな、そういうリアクションをする人がいたらいいなと思っていて。**全部のことに意見を持つのは無理だし、別に意見を持っている必要もないんですよね。だから、むしろそこで『なるほど』って言ってくれる人がテレビの中にいたら、僕たちは安心できると思うんですよ。**なので、やっぱりメディアの中で知ることを面白がる、『知れて良かった』て素直にリアクションをするような人がいればよりニュースを楽しめるのかな、と思うんですがどうでしょう?須貝さんはなにかあります?」

須貝さん「そうですね。ニュース自体を楽しむ方法は今言ってくれた感じかなと思っていて。あとは手前味噌なんだけれども、**ニュースってやっぱり意外感があるからニュースとして報じられていると。**そういうときには、『M-1、誰が出たと思う?』っていうこれですよね。やっぱクイズね。」

伊沢さん「便利よ、クイズは。」

須貝さん「全員にクイズやってくれと言いたいわけではないけれども、『今朝見たんだけどこれ知ってる?』っていうコミュニケーションになれば、ニュースは『自分ごと化』するんじゃないかと僕は思っているわけです。『今日のあいつとの会話のために、今日の特ダネを探す』っていうのも、1つのニュースの探し方、楽しみ方だし。あるいは、『何が意外か』が分かるためには、今度は『何が普通か』が分かってないといけないですね。僕は人と付き合うのが結構好きなんですが、コミュニケーションを面白く、楽しくする技としてニュースに触れるのはどうかな、といつも思っていて。QuizKnockの『朝Knock』も、『これ意外だな』っていうのが出ていると思うんですけど、たとえば事物の意外性と『意外じゃなさ』とを見分ける楽しみをニュースの中に見つける、みたいに、コミュニケーションの手段や道具としてニュースを使ったら楽しくなるんじゃないかなと思っていますね。

伊沢さん「最後に1個いい?『グッとラック!』*に出たときに思ったのだけれど、この番組はニュースじゃなくてオールズにしたいなと思って。『そういえばあれどうなった?』とか、『これもう少ししっかり考えたほうがいいのでは?』というテーマはあるはずで。そこで議論するような番組がもっとあってもいいかな、と思いました。」 *「グッとラック!」はTBS系列で放送されていた朝の報道番組のこと

ーありがとうございました

インタビュー後記

 以上が、クイズノックの伊沢さん、須貝さんへのインタビューでした。  まず初めにお二人がどのようにしてニュースに関心を持ったか、については須貝さんが財テクから、伊沢さんはクイズプレイヤーとしての強迫観念があったとのことでした。その後、コメンテーターとして出演する中で背景に関心が向かっていったようです。  ニュースを「自分ごと化」してもらうには?の問いには、伊沢さんが「何かをゲットした喜び」、須貝さんが「チューター」の存在を挙げ、人とニュースが結びつくことを中心にお話をされていました。  ニュースを見る時に気をつけていることでは、伊沢さんが中心となって「能動的に考えること」「ファスト真実があると思わないこと」「偶然によって動くこともある」「異なる視点の足し方を考える」「難しいことを簡単に話せるようにはならない」といった点を話してくれました。  最後にニュースを楽しく学ぶためには?という問いには、伊沢さんが「リアクションしてくれる人」がいること、須貝さんが「コミュニケーションの手段」としての活用の仕方について話してくれました。お二人とも「クイズ」の魅力についても語ってくれました。

 インタビュアー自身が特に印象に残った点は2つありました。  1つ目が「熱っぽく語れる人」の重要性です。まず「よくわからないけどすごいんだ」と思ってくれるかどうか。いくら口先で魅力を語っていてもその人が纏う雰囲気が重かったら意味がないな、と再確認できました。私自身がお話しする機会のあった新聞記者の方も、「今はさまざまなアトラクティブなもの、時間を消費できるものがあり、その中でニュースを見てもらうためにどうすればいいかで試行錯誤している」と仰っていました。ニュース単体の面白さは、熱湯風呂の愉快さには絶対勝てないでしょう。ニュースの見出しだけ見ても、何が面白いのかさっぱりです。でもお二人のお話を援用すれば、出来事の間には偶然を含めたつながりがあって、意外性があることにニュースの面白さが隠れていると思います。そういったところをこれからも熱く語れたらいいのかな、と思いました。  2つ目が「難しいことを簡単に話せるようにはならない」ということです。「理解できるところで止めておく」と話されましたが、これは一見するととても不誠実な姿勢に見えるんです。あえて隠すわけですから。でもそれ以上に「分かった状態で帰ってもらう」ことが大事だと話されたことに自分自身とても驚かされました。次もまた聞きにこようと思ってもらい、継続的に関心を持ってもらう方が、一度で説明するよりも効果的なんだと力説されたので、自分でも試してみようと思いました。