君主制について分かりやすく解説ー君主制とは?日本・世界の動向は?

2023年06月05日・国際 ・by kota

5月6日、イギリスでチャールズ国王の戴冠式が行われました。ワイドショーなどで連日取り上げられた他、テレビ中継も行われるなどかなり注目されましたね。

イギリスも日本も、形式は違えど君主が存在し、世襲で皇位が受け継がれています。しかし、君主制をとっているのは世界でも少数派なんです。

この記事では「君主制とは何か」そして「世界にはどんな君主制の国があるのか」について見ていきます。

君主制とは?

手始めに、国語辞典を引いてみましょう。大辞林には「君主によって統治される政治形態」とあります。わざわざ言い換える必要はないかもしれませんが、国家の政治体制の中に君主と呼ばれる存在がいることを指しています。

過去にはさまざまな君主制の種類がありましたが、ここでは現存するものをピックアップして紹介します。

立憲君主制

立憲君主制は、憲法の中で君主の立ち位置を規定している政治体制です。日本やイギリス、タイなどがこれに当たります。しかし、一括りに立憲君主制といっても、日本のように政治的権力がほとんどない国もあれば、議員を国王が指名する制度を持つ国も存在し、君主の権限の大きさはさまざまです。

また、カナダやオーストラリアなどの国はイギリス国王を君主とした立憲君主制をとっています。これは、これらの国が旧イギリス植民地だったことに由来します。ですが、現在は形だけのものであり、各国では総督と呼ばれる役職が国王の代行として儀礼的な行事などを行っており、実質的な国内政治はそれぞれの国の内閣が中心におこなっています。

絶対君主制

「絶対王政」という言葉を世界史の授業で聞いたことがある人も多いと思いますが、絶対君主制も似たような政治体制で、君主が国の統治の全権を所有し自由に行使するというものです。サウジアラビアやクウェートなどが絶対君主制をとっていますが、その数は減少しています。

ここからは、各国の君主制に関する動向を見ていきます。

イギリス

昨年のエリザベス女王の逝去、そして先日行われた戴冠式をきっかけに日本でもイギリス王室への関心が高まりました。中継でも、パレードを見に多くの人が沿道に集まっている様子が見られました。

では、イギリス国民はイギリス王室に対してどのような意見を持っているのでしょうか?イギリスの世論調査会社YouGovが2023年4月に行った調査では、

・今後も王室を継続すべき・・・58% ・国のトップは選挙で選出すべき・・・26%

という結果でした。過半数の人が王室に好意的な意見を持っていることがわかります。一方、18〜24才での結果は

・今後も王室を継続すべき・・・32% ・国のトップは選挙で選出すべき・・・38%

というものでした。1つの調査結果だけを鵜呑みにすることはよくないことですが、この結果からは若者の王室離れが起こっていると言えるでしょう。

王室離れの原因は?

王室に対する反対意見にはどんなものがあるのでしょうか?

1つに、王室の維持に使われる税金があります。「王室が税金で裕福な暮らしをする一方で納税者は苦しい家計をやりくりしなくてはならない」という意見は根強くあります。

また、国王が世襲制なのは納得いかないというものです。先ほどの世論調査でも、若者の間ではトップは選挙で選ぶべきという意見が4割近くあります。

他にも、スキャンダルが度々起きていることも反対派に火をつけるきっかけになっています。

イギリス王室の対応は?

このような反対派の意見も踏まえ、チャールズ新国王は戴冠式をスリム化するとしました。実際、リサイクルされたティアラなどが話題になりましたね。また、パレードの行程も以前の戴冠式より短くなったということです。このように、王室も国民により受け入れてもらえるよう努力していると言えるでしょう。

タイ

次に、タイの君主制事情を見ていきます。「なぜタイに注目するの?」と思う方もいると思いますが、タイは今君主制が大きく揺らぐかもしれない瀬戸際にあるのです。

タイの政治体制の現状

2016年に王位を継承したワチラロンコン国王は、軍隊を直接の指揮下に置き、王室の財産を個人所有にするなど権威を急速に高めていきます。こうして、軍と国王が大きな権力を持つ情勢となっています。

王室改革を求めるデモ

このような状況に対して、2020年ごろから若者の間では民主化、そして今までタブー視されてきた王室改革を求める声が広がっています。これに対し、軍と国王は王族を侮辱した際に適用される不敬罪を2年ぶりに復活させて厳しく対応しています。

王室改革の可能性…?

タイでは今年5月に下院の総選挙が行われ、王室改革・不敬罪を定めた法律の改正を訴える野党が過半数を獲得しました。王室改革や民主化を求める声が実を結んだ1つの結果と言えるでしょう。一方、上院は軍の力が強いため、どの程度改革が進むかは不透明な状況です。

今後のタイの情勢に注目です。

日本

最後に、日本の皇室に対する意識を見ていきます。イギリスと同じように、世論調査の結果から見ていきます。

NHKが2019年(令和元年)に行った皇室に関する意識調査では、「今の皇室に親しみを感じますか?」という質問に対して「とても感じる」「ある程度感じる」と答えた人は71%でした。日本の皇室はある程度好意的に受け止められていると言えるでしょう。

一方、皇室の存続や皇族の振る舞いに関しては議論を巻き起こすこともありました。そのような中、皇室に関する正確な情報を届けるためとして宮内庁は4月から広報室を設けました。まだ具体的な動きはないようですが、皇室からの情報発信によって国民の皇室に対する理解を深めることに繋げる狙いです。

参考

CNN「世界43カ国に君主が存在、その権限は?」2016年8月9日
YouGov「Royals | YouGov / BBC Panorama Poll Results 14th-17th April 2023」2023年4月24日
日テレNEWS「英チャールズ国王“厳しい船出” 若者中心に“王室離れ”国民の支持どうつなぎとめる」2023年5月6日
NHK「イギリス チャールズ国王 きょう戴冠式 多様性重視した式典に」2023年5月6日
BBC NEWS JAPAN「【図解】 イギリス国王チャールズ3世の戴冠式 どこでどのように」2023年5月1日
Bloomberg「「バンコクの春」、タイ王室改革掲げる政党が第1党-前途多難も」2023年5月16日
NHK解説委員室「王制改革求める声も タイ反政府デモ」2020年9月17日
西日本新聞「不敬罪復活、タイの若者苦闘 王室批判で立件…「次世代のため」有罪覚悟」2021年5月31日
NHK解説委員室「タイ総選挙 軍政支配に終止符を打てるか」2023年5月15日
NHK「皇室に関する意識調査」2019年9月
NHK「宮内庁 新設の広報室 初代室長に警察庁の藤原麻衣子氏」2023年4月1日
外務省「国・地域」2023年5月28日閲覧